제목   |  [03/05]スタートアップの光と影 ~空飛ぶバイクはなぜ破綻したのか 작성일   |  2024-02-28 조회수   |  26050

スタートアップの光と影 ~空飛ぶバイクはなぜ破綻したのか

「バイクが空中を飛んでいる!」

 

 

 

 

その光景に目が釘付けになったことを、今でも鮮明に覚えている。

 

2年前、北海道でのプロ野球開幕セレモニー。

日本ハムの新庄監督を乗せてフワフワと浮くその姿は、空飛ぶバイクの名にふさわしく、かつてSF映画で見たような、未来の乗り物そのものだった。

 

製作したのは、大手の企業ではなく、設立まもない小さなスタートアップ。

 

大きな期待が寄せられた会社には有名企業などから50億円の投資が集まったが、ことし1月に経営破綻が明るみになった。

スタートアップの成功の象徴とも呼ばれながら、なぜ短期間で失敗に追い込まれたのか。

実態を取材した。

 

(スタートアップ取材班)

 

脚光を浴びた空飛ぶバイク

2022年の3月29日。
プロ野球パ・リーグの北海道開幕戦が行われたドームは、大きな歓声に沸いていた。
日本ハムの新庄監督が、見慣れない乗り物に乗ってさっそうと登場したからだ。

この乗り物は、空中を移動することができる「空飛ぶバイク」。
東京・港区のスタートアップ、「A.L.I.Technologies」(以下A.L.I.)が開発したものだった。

当時の社長は、このバイクについて誇らしげにこう語っていた。

 

A.L.I.の当時の社長
「比較的手軽に乗っていただけることを重視して開発しました。道路が舗装されていない湿地や砂漠、そういったところで地面から浮いて動くことができるので、移動手段として活躍していくのではないかと思っています。そして何よりも、人やモノがこれまで以上に気軽に空を移動できるような世界を作っていきたいですね。日本発の産業として認知度を上げ、世界中に広げていきたいと考えています」

 

空飛ぶバイク(ホバーバイク)は、ガソリンと電気を使用し、備えられた6つのプロペラを回して浮上する仕組みだ。
仕様書などによると、最高速度は時速80キロに達し、最長でおよそ40分間飛行することができる。

価格は7700万円と高額だったが、2021年の秋頃には一般の顧客向けの販売も始まっていた。

用途としては、ショーなどのエンターテインメントだけでなく、災害時に車で行けない場所に向かうことや、貨物の輸送などにも期待されていた。

「自由に空を飛び、街を行き交う」。これまでの交通手段の概念を大きく変える予感をもたらす技術に、国内外から50億円を超える投資が集まった。

さらに国や自治体も次々にA.L.I.への協力や支援を表明。
国土交通省が7000万円近くの事業を発注するなど、見た目には順調そのものだった。

A.L.I.は、もともと東京大学で航空宇宙などを研究していた学生が中心になって設立されドローンなどの開発を行っていたが、その後、経営者が替わり規模を拡大していく。

なかでも空飛ぶバイクが発表されると大きな話題となり、会社の評価額はわずか5年で当初の71倍、210億円を超えた(STARTUP DB調べ)。一躍、有名なスタートアップとして、脚光を浴びることになったのだ。当時の資料によると、出資していた会社のなかには、京セラや三菱電機など有名企業も多く含まれていた。
空を飛ぶ新しい乗り物については海外も含めて開発競争が行われていて、まさにこれから大きな飛躍が期待されている…はずだった。

 

【スタートアップとは】
スタートアップ(スタートアップ企業)とは、新しい技術や革新的なアイデアを取り入れて立ち上げられた、新興企業のことを指す。日本ではかつて「ベンチャー」と呼ばれることも多かった。創業当初は知名度や実績がないので、金融機関の融資を受けることは難しく、会社の運転資金の多くは成長に期待する投資家や投資会社に出してもらうことがほとんどである。
「アップル」や「グーグル」、「アマゾン」などの世界的企業ももともとはスタートアップだった。ただ事業が軌道に乗るまでに資金が尽きることも少なくなく、成功する確率は数パーセントと言われている。

 

破綻は突然に

「あの空飛ぶバイクのA.L.I. が破産したようだ」

 

その情報が駆け巡ったのは、ことし1月中旬のことだった。

少し前から、従業員への給与未払いなどのきな臭い噂はあったが、関係会社が支援して立て直す可能性もあると思っていただけに、破綻は関係者にとって大きな衝撃だった。

 

関係者によると、取引先企業への未払い金などの負債総額は21億円余り。

従業員に支払われていない賃金もおよそ1億円に上るとみられている。

あの球場でのデモンストレーションから2年もたっていない。

あまりにも早い転落劇だった。

 

関係者や信用調査会社によると、実は今から1年前の2023年の春ごろには資金繰りに行き詰まる状況が続いていたという。

製品の開発費用などで月に2億円以上の経費がかかるうえ、頼みの綱であったアメリカでの資金調達もうまくいっていなかった。

 

いったい何が 関係者は語る

A.L.I.には、自治体も補助金を出し、国も事業を発注していた。

いわば官民あげての期待のスタートアップだったA.L.I.はなぜ破綻したのか。

会社の実態は、いったいどうなっていたのか。

私たちはまず、A.L.I.の本社の所在地となっていた、東京・港区のある場所に向かった。

 

東京タワーを間近に望めるビルの一室。

すでに会社の看板はなく、入り口のドアをノックしても返答はなかった。

電話で複数の幹部に接触を試みたが、まったくつながらない。

経営状況を知る人物になかなかたどり着けずにいたとき、ようやくある関係者から、「実態を知る人を紹介できるかもしれない」という連絡が入った。

 

空飛ぶバイクは“未完成”だった

関係者の紹介で取材に応じてくれたのは、都内で会社を経営する山田希彦さん。

2023年1月から6月まで、A.L.I.の親会社の社外取締役を務めていた人物である。

 

A.L.I.の経営実態を知る立場であると同時に、「空飛ぶバイク」の可能性に期待して自ら多額の投資をした1人でもあった。

 

山田さんが社外取締役まで引き受けたのは、経営者としての自分の経験が役に立つならと考えたからだ。

 

また、新しいタイプの乗り物を開発するという事業内容に、将来とても大きな成長を遂げるのではないかと期待を持っていたという。

 

しかし、社外取締役に就任し、実際に会社の内情を把握できる立場になると、ほどなくしてある重要な事実に気がつくことになる。

 

すでに空飛ぶバイクは一般向け販売にもGOサインが出ていたのだが、肝心の性能そのものはまだ不十分で、実用化するにはまだまだ開発途中だったのだ。

確かに、空中に浮いて移動することができる。しかし、室内で風がないことなど限られた条件がそろったときにのみ可能なものだった。実際に運用するとなると屋外での安定した飛行が不可欠であるが、安全面や性能の面では、まだまだ完成品とは言えないものだった。

山田希彦さん
「当初の経営陣の説明では、『空飛ぶバイクはすでに完成していて、受注もバンバン入っている。来年には100億円は売り上げられる』と言っていました。しかし、実際は実用に耐えるものではなく、安心、安全に飛行することが確約されている状態では全然ありませんでした。
投資家もお客様も、製品としてはすでに完成していると思っていましたから、実態とはかなりギャップがあったのかなと思います」

今回、初めて取材に応じた山田さん。私たちにこうつぶやいた。
「空飛ぶバイクは、どう見ても未完成だったんです…」

A.L.I.でマーケティングなどを担当していた別の男性も、当時を振り返ってこう証言している。

マーケティングなどを担当していた男性
「プロモーションは、とてもうまくやっていたと思います。ただ、肝心のバイクのほうがまだまだ開発途中で、空を飛び回るというイメージからは正直かけ離れているなと思っていました。
でも、イメージが崩れてしまうと一気に投資家も離れてしまうので…。当初のインパクトをいかに持続させるかにとらわれ、機体のリアルな状態を経営陣も含めて全員が受け入れなかった、見ないことにしたまま突き進んでいました。機体が完成していなくても、期待値を醸成し続けなければ投資家は離れます。投資家に話した内容を突き通すため、という側面もあったのではないでしょうか。販売契約はわずか3件にとどまっていました」

すでに技術的な課題をクリアして完成していたと思っていた空飛ぶバイクは、当時外部に宣伝されていた内容とは大きく異なっていたのが実態だった。

この男性は、報酬や出張の旅費など数百万円が未払いになっていると訴えている。
A.L.I.については、労働基準監督署も調査に乗り出していることがわかっている。

バイクは実際には未完成のままだったが、それが投資家などにきちんと公表されることはなかった。当時、会社では、高額の材料を使った開発費や技術者の人件費などで、1か月に2億円以上の経費がかかっていたという。投資家などから集めた資金が底をつくのは時間の問題だった。

 

商品がまだほとんど売れていないなかで、アメリカで親会社を上場させて資金を集めようとしたがうまくいかなかった。

手元の資金が底をつき始めるなか、経営陣は起死回生の一手として、オイルマネーによって潤っている中東の富裕層に販売し、一気に挽回する計画を立てていた。

 

中東での飛行実験 しかし…

2023年3月、UAE=アラブ首長国連邦の首都、アブダビ。

政府関係者や王族など、桁違いの大金持ちを前に、空飛ぶバイクによるデモンストレーションが開かれることになった。

会社にとって、存続をかけた最後の賭けともいえるイベントだった。
これが成功すれば、中東などの富裕層から注文が殺到し、新たな投資も集まるだろうという見通しがあった。
しかし、肝心の空飛ぶバイクの性能はこのときもまだ完成したものではなく、風が吹く屋外で安全に飛行するのは難しい状態だった。
当日の気候にも、大きく左右されるおそれがあった。

本番当日、日本で成功を祈っていた山田さんのもとに、現地に同行していた外国人エンジニアから一通のメッセージが届いた。

会場に突風が吹いている。私は実験を中止したほうがいいと思っているが、トップの判断は、“決行”だ。どうするべきか

 

エンジニアに話を聞くと、すでに関係者は集まっていて、空飛ぶバイクの実演をいまかいまかと待っている状況だという。

 

山田さんは、風が吹いているという会場の気候に不安を感じながらも、ここまで顧客を集めさまざまな準備をしているならこの状況では中止は考えられず、デモンストレーションはやるしかないと考えたという。

 

やむをえないと覚悟を決めて、返信のメッセージを送った。

 

とにかく、風をかわせる場所を探してくれ。失敗しないことを祈る

 

 

山田さん

幸いにもデモンストレーションは事故なく無事に終わった。

しかし、空飛ぶバイクは自由に空を飛び回るイメージとはほど遠く、地面からわずかに浮いて、およそ30秒間ほどホバリングしただけだった。

やはり、風が吹く屋外では、これが精いっぱいだったのだ。

現地にいた関係者は、UAEの要人がほとんど飛ばなかったバイクを冷ややかな目で見ていたことを覚えているという。

山田さんは、改めて当時をこう振り返っている。

山田希彦さん
「事故なく飛行できたのはよかったが、それをお客さんが見たときに、じゃあ買いたいと思えるものかというとそうではなかったということです」

期待した中東の富裕層からの受注は、結局入らなかった。
会社を存続させるための最後の切り札になることが期待された場は、失敗に終わってしまったのだ。

『ノータイム、ノーチョイス』 “不誠実”な資金調達も

UAEでのデモンストレーションがうまくいかなかったことで、経営はさらに悪化していった。

山田さんや関係者によると、開発費用などとして依然として毎月2億円以上の出費があるなか、経営陣は空飛ぶバイクを完成させて販売することよりも、会社が生き延びるための資金調達に奔走しているようにしか見えなかったという。

山田希彦さん
「もう自転車操業ですね。資金調達をしないことには生きていけない状態だった」

そうしたなかで、会社の信用自体に疑念を深める出来事があったという。

せっぱつまった状況のなかで、ある資金調達の話があったときのことだった。
山田さんら社外の取締役を含め、主要なメンバーが集められて会議が開かれた。

このなかで、経営トップから、投資を受ける条件が幹部たちに説明された。
説明を聞く限りでは条件は悪くないもので、取締役会でも承認されたという。

しかし、その後、実際に契約書にサインをしようとした山田さんは、分厚い英語の契約書を詳細に読んで、自分の目を疑ったと振り返る。

そこには、会社の今後の経営にも響きかねない重要な“デメリット”が書かれていたのだという。これは、先ほどの会議では説明されていなかった内容だった。

山田希彦さん
「契約書は、英語で何十ページにもわたって法律用語が書かれていて、解釈が非常に難しかったが、よく読むと、取締役会で承認を取っていない内容がいくつも明記されていました。今晩中にサインしてくれということで、多くの人は理解しないままサインしていたと思います」

山田さんは、トップに連絡を取り、「契約書をちゃんと読んで先方からきちんと説明を受けたのか。契約書には説明されていないことが書かれている」とただした。
しかし、「資金調達ができなければ、会社が潰れてしまう」と言うばかりで、肝心なことははぐらかされたという。

「ノータイム、ノーチョイス」

こう一方的に言われ強く押し切られて、やむなくサインをするしかなかったと説明する。

その後ほどなくして、山田さんは親会社の社外取締役の任を解かれることになった。
A.L.I.が破綻する、およそ半年前のことだった。

影響は自治体や地域の企業にも

A.L.I.は、多くの自治体にとっても期待の星のような存在だった。
そのひとつが、山梨県だ。

山梨県は、リニア中央新幹線が県内を通ることもあり、最新の技術への理解促進を昔から進めてきた。人口減のなか、テクノロジーで地域を活性化しようと、スタートアップへの支援も積極的に行っている。

A.L.I.もそのひとつだった。

2021年の10月、移動手段や防災などの分野で空飛ぶバイクなどを活用できるとして会社と協定を結び、750万円の補助金を出していた。

山梨県のスタートアップ支援担当者
「我々も、ホバーバイクやドローン管制システムなど、新しい取り組みについて非常に期待していましたし、支援もしてきました。災害時にこうした技術を活用することといった部分も含めて大きな期待をしていたところなので、とても残念です」

山梨県のなかでも特に期待をかけて支援に動いていたのが、人口1万人ほどの身延町だ。過疎化や高齢化が進むなかで、町の産業活性化になればと考えていたという。

空飛ぶバイクの保管場所として、廃校になった中学校の校舎をA.L.I.側に貸していた。しかし賃料およそ200万円は今も支払われておらず、校舎には古くなったバイクや部品などが置かれたままになっている。

町は賃料の支払いや、校舎の明け渡しなどを求めて裁判を起こす方針だという。

また、協力していた地元の企業への支払いも滞っていることがわかった。

空飛ぶバイクの飛行テストをするために大型のクレーンなどを貸し出していた地元の業者は、もう代金の回収は諦めているという。
その金額以上に、地域の起爆剤にと期待をしていただけに、ショックが大きいと肩を落としている。

地元の会社社長
「経済の活性化にもつながるのではないかと、とても期待していたんです。若い人も多くて、一見するといい会社かなと思っていましたよ。それだけに、本当に残念ですよね。もう、お金のことも諦めようと思います」

錬金術、マネーゲームだったのでは

多くの人の夢を乗せるはずだったA.L.I.の空飛ぶバイク。 大空に飛び立つことはできなかった。

親会社の社外取締役だった山田さんは、経営破綻についてこう振り返っている。

山田希彦さん
「いま考えると、錬金術、マネーゲームだったのかなと思います。目標を高く持つのはすごくいいことですし、投資家に夢を語ってお金を集めるのもいいのですが、うそをついたり、都合のいい事実しか伝えなかったりするのは、絶対やってはいけません。やはり、資金を集めようとして大きく見せる、空飛ぶバイクを過大に評価していたところはあったのだと思っています」

私たちは、破綻したときの経営トップにも面会した。

身の丈にあったプロモーションをするべきだったのではないかという問いについては、確かにそのとおりだったとしたうえで、「私が経営に関わったときには、すでに後戻りできない状態になっていた。資金繰りが厳しいなか、いったん会社を清算するしかなく、破産の申請はやむをえない判断だった」と説明した。

日本のスタートアップに光は~取材後記

今月発表された日本のGDPは、ドイツに抜かれ4位に転落した。
バブル経済崩壊後、失われた30年とも言われ、日本は経済の停滞から抜け出せない状態が続いている。

こうした状態を打破できると期待され、いま経済界や国が大きく注目しているのがスタートアップだ。

GDPで世界の首位に立つアメリカでは、スタートアップとして創業した「グーグル」や「テスラ」、それにFacebookでおなじみの「メタ」などが社会に大きなインパクトを与え、いまアメリカ経済を牽引している。

特に若者の間では、スタートアップに対する関心がかつてないほど高まっていて、全国の有名大学には、起業を学ぶサークルが次々に誕生し多くの学生が集まっている。

「若いうちに新しいことに挑戦したい」
「お金を儲けたい」
「自分の好きな働き方をしたい」

動機はさまざまだが、JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)とも呼ばれる伝統的な大企業で働くことを選ばず、スタートアップに進む若者の姿が目立つようになってきているのだ。

一方で、スタートアップの場合は、社内のガバナンスが不十分だったり、事業計画が甘かったりして失敗するケースも少なくない。破綻したA.L.I.のように、多額の資金を集めたものの、実態が伴っていないケースも確認されている。

スタートアップの支援政策などに詳しい関西学院大学の加藤雅俊教授は次のように指摘している。

関西学院大学 加藤雅俊教授
「A.L.I.のように、製品を実態よりも誇大に見せて販売したり資金調達をしたりするようなケースは好ましくない事例です。いくらアイデアがあっても、製品を完成させる強い意志がないスタートアップは経済に対して価値を生み出さないことになってしまいます。
国や経済団体などが成長が見込めるスタートアップに適切に支援をし、大きく成長させることは、大企業の競争意欲を刺激することにもつながり、結果として日本の経済成長のためになります。スタートアップは成功しない場合も多いですが、経営破綻自体を責めるよりも、失敗の要因をきちんと分析し、再チャレンジできる社会を作っていくことが重要だと思います」

日本でも、人気のフリマアプリを運営する「メルカリ」や、電動キックボードのサービスを行っている「ループ」などが、スタートアップとして注目を集めている。
これから、世界的にインパクトのある新しい企業が出てくることを期待したい。

2月26日(月)クローズアップ現代で放送
NHKプラス 配信期限: 3/4(月) 午後7:57

https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/kishanote/kishanote88/

 

인쇄하기